ドルシー・ルガンバとの出会い

ブルック劇団で新たな作品作りをするとき、役者の選択で苦労することが往々にしてある。『ティエルノ・ボカール』の演劇化に着手したとき、リハーサル段階で何度かの交代劇があり、最後にアマドゥー・ハンパテバーと語り部役に着いたのがドルシーだった。もの静かで眼光鋭く、他のアフリカの役者とは異なる雰囲気があった。印象的だったのは音楽を交えてのリハーサルの時、演劇に使わないかと小さな土器の壷をもってきたことだ。どこか呪術的雰囲気のある壷で、彼が開いた口部から内部に語りかけるように声を発すると、お経を唱えているように聴こえてくる。ルワンダの儀式に実際使われていたという土器で興味深かったが、演劇に使うことは避けた。土器の呪力ゆえかもしれない。