2008-01-01から1年間の記事一覧

マリの狩猟音楽家の弦楽器ドンソ・ンゴニ

マリの弦楽器カマレ・ンゴニについて書いてきたが、もう一つ強烈な印象を与えられたンゴニがある。ドンソ・ンゴニという楽器で構造的にはカマレ・ンゴニと同じだが非常に大きな瓢箪の殻を共鳴体に用いている。伝統的にはマリの西南部ワスル地方の猟師が狩猟…

マリの音楽家たち

マリの音楽家ズーマナに作ってもらったソクー(一絃の擦弦楽器)は残念ながら「ティエルノ・ボカール」の劇中では用いることがなかったが、この演劇に採用したマリの弦楽器が一つだけあった。カマレンゴニという弦楽器で、よく知られている弦楽器コラの原型…

皮膚で旧石器時代を感じた日

19日から20日にかけて異例の初雪(岐阜では11月のこの日の初雪は25年ぶりとか)。紅葉がピークを迎えた晩秋の郡上の山々、その赤や黄色の山肌が一斉に白い綿帽子で覆われてしまった。気温は12 月下旬頃まで下がり、部屋の中で吐く息も白い。外の雪景色を見な…

マリの音楽家ズーマナ・テレタ

ブルックの『ティエルノ・ボカール』音楽製作のためにマリを訪れた時、俳優のハビブ・ダンベレのパートナーでありヴォーカリストのファンタ・トラオレ宅に多くの音楽家が集まり、私のために音楽会を催してくれた。様々なマリの伝統楽器奏者の中でもとりわけ…

さようなら筑紫哲也さん

11月7日ニュースキャスターの筑紫哲也さんが逝かれた。筑紫さんといえば1989年から始まったTBSのニュース23のメインキャスターとしての活躍が多くの知るところであるが、ミレニアム2000年の幕開け、1月7日放送のこの番組でご一緒させてもらったことがあっ…

晴天下の秋季ワークショップ

今年の秋季ワークショップ「創造塾」は、爽やかな連日の晴天のもと、さまざまな出会いと交流がありました。本ワークショップを開始したのは1988年にピーター・ブルック劇団の『マハーバーラタ』日本公演が終了し、郡上に活動の拠点を移した年で、当時はワー…

立光学舎 秋季ワークショップ(創造塾)のご案内

郡上は、一日一日と秋の気配が深まってきています。山は赤や黄色の木の葉に彩られ、吉田川の水表は絨毯が敷かれたように枯葉が集積し、サツキマスが産卵のために遡行してきています。生命の移ろいを、自然のあちこちで感じる毎日、いよいよ秋季ワークショッ…

『壁画洞窟の音』レクチャー&サウンド・デモ in大阪

『壁画洞窟の音』(青土社)とCD『暝響・壁画洞窟』(日本伝統文化振興財団)の発売を記念して東京、京都で行なってきたレクチャー&サウンドデモンストレーションを10月18日に大阪で開催。東京の馬喰町ART&EAT、サウンドカフェ・dzumi、京都YU-ANと、これま…

円空作「粥川鵺縁起」

私の住む郡上市に美並という町がある。町といっても長良川が蛇行し、四周を高い山々に囲まれた山村で、歴史民俗誌的にも興味深いところである。この美並町で最も注目されるのが町のシンボルともなっている「円空」。修験僧、木喰遊行者の円空は、誰もが知っ…

桐生でのコンサート

1988年に岐阜県郡上八幡に立光学舎を設立して以来、定期的にワークショップを開いてきた。訪れた多くの参加者の中には、音楽家や俳優を志す者も少なくなかった。そんな参加者の一人にプロの太鼓奏者を目指していた石坂亥士がいた。現在は群馬県の桐生市に拠…

マリの美術家アブドゥー・オウォログム(3)

アブドゥー・オウォログムは、マリ、ドゴン族の村で生まれた。しかし幼くして家庭の事情で、トンブクトゥに移住し、その後青年時代を首都バマコで過ごした。それゆえ、どっぷりと伝統的な生活の中で暮らしたドゴンの末裔とは異なる。それでもバマコの美術学…

マリの美術家アブドゥー・オウォログム(2)

30年近くにわたるP・ブルック劇団の仕事で、多くのマリ共和国の役者と出会った。劇団に参加した1976年当時はマリク・バガヨゴがいた。80年代になり、大作『マハーバーラタ』が始まると、マリクにかわってソティギ・コヤテが参加した。彼はマリとブルキナファ…

マリの美術家アブドゥー・オウォログム

『布絵の魔術師・アブドゥー・オウォログム』 西アフリカでボゴランとして知られる木綿の帯。この一枚の布を用いて独自の美術世界を拓いたアブドゥー・オウォログム。彼の祖先であるドゴン族の言い伝えによれば、織物は「ことば」であり、それを意味するソイ…

馬喰町ART+EATと吉祥寺sound cafe dzumiでの出版記念講演

去る8月29日(金)は久方ぶりの東京。著書『壁画洞窟の音』とCD『暝響・壁画洞窟』の発売を記念した馬喰町ART+EATでの講演のために雨上がりの郡上を出発。途中、豪雨での新幹線停止を心配したが、その前になんと岐阜から名古屋までの列車がストップ。しかも…

明日、東京で

いよいよ明日から二日にわたって拙著『壁画洞窟の音/旧石器時代・音楽の源流をゆく』とCD『暝響・壁画洞窟』+古代三部作の発売を記念したトーク&レクチャーが開催されます。 29日は馬喰町EAT&ART(http://www.art-eat.com)、30日は吉祥寺sound cafe dzumi(…

8月15日、ゲンダーヌさんのことなど

8月15日、テレビは昼夜を問わず北京オリンピック一色で、終戦記念日の番組もわきに追いやられたかのような状況。そんな中、この日の中日新聞に、太平洋戦争の犠牲者としてあまり知られていない北方少数民族のことが特報として書かれていた。 「旧日本軍が徴用…

出版記念イヴェント

拙著『壁画洞窟の音』(青土社)とCD『暝響・壁画洞窟』『銅鐸』『サヌカイト』『縄文鼓』(日本伝統文化振興財団)の同時出版を記念して各地でトークおよびレクチャーの会を催していきます。そのまず第一回を東京の馬喰町ART+EATで行ないます。この会場は…

CD古代音楽の世界

新譜『暝響・壁画洞窟』と古代三部作『銅鐸』『サヌカイト』『縄文鼓』が数日前に一斉に発売になりました。さっそく新宿のタワーレコードで土取利行の古代音楽の世界を紹介する特別コーナーが設けられているとの知らせが届きました。この先、全国で多くの人…

CD古代三部作+「暝響・壁画洞窟』明日リリース

今日は明日リリースされる我がCDのご案内です。 発売されるのは、古代三部作として『銅鐸』『サヌカイト』『縄文鼓』と『暝響・壁画洞窟」の4枚です。 古代三部作は1980年代から単体で発売されてきた古代音楽の作品を今回初めてトータルリリースするもの。 …

著書「壁画洞窟の音」とCD「暝響・壁画洞窟」一斉発売

五月に来日したアフリカからの二人の友人について書いているが、少しここで中断し、近く一斉に発売される私の著書とCDについてお知らせさせていただきます。 著書は青土社から刊行される『壁画洞窟の音〜旧石器時代・音楽の源流をゆく」で、同出版社の拙著「…

ゴマ(NGOMA)

写真はウルヴィントーレの一員エマーブルが持参し、演奏したルワンダの太鼓ゴマ(ngoma)。ルワンダの王国時代、宮中に使える楽士たちが、王(mwami)を讃えるために演奏していたシンボリックな楽器である。 ルワンダ王国がいつ頃から始まったかは、文字によ…

TICAD×Renovation Project vol.4

5月25日(日)、ウルヴィントーレ公演三日目の最終日は『追跡』上演の後、ただちに舞台を同スタジオ裏に移して劇団員とドルシー、今回のもう一人のマリ共和国からのゲスト、美術家のアブドゥー・オウォログム、そして私が参加しての特別プロムが催された。三…

ガチャチャ裁判

先にルワンダではジェノサイドの裁判がいまだ続行されていると書いた。わたしたちにはあまり知らされていない話ではあるが、『追跡』上演の際に配布されたプログラムにルワンダの女性アリス・カレケジさんが書いたこの裁判制度の文章が掲載されていたので記…

ウルヴィントーレ『追跡』

1963年西ドイツのフランクフルトで始まった元アウシュヴィッツ収容所員に対する裁判を基に、二年後の1965年にペーター・ヴァイスが舞台作品として書いて上演した『追跡』は、東西ドイツの各地だけでなくヨーロッパ各国でもあらゆる演出家の手によって上演さ…

「ルワンダ94」から「追跡」へ

ルワンダでのジェノサイドを逃れたドルシーはフランス経由で、遂にベルギーへと辿り着いた。一般には知られていないリエージュという町の芸術創造集団グルポフに参加し、俳優の訓練を積んでいたドルシーは、やがて主宰者デルキュヴェルリーのもと、世界的な…

『MAREMBO』続き

『MAREMBO』は「母』を意味するという。本の題名となっているように、ドルシーにとって母は特別な存在だった。ダフローズという名のかの女は敬虔なキリスト教徒で、ルワンダで読み書きを教えられた最初のキリスト教徒の家系だった。ダフローズは教師で、かの…

MAREMBO朗読

「それは1994年4月7日、朝10時のことだった。天気予報は台風の徴候はみられないと報告していた。カッコウが鳴き、火山は静けさを保ち、ナイル川は眠りについていた。私たちは寛大な大地の上に暮らし続けてきた。20世紀最後の私たちの唯一の不幸は、皆がいつ…

MAREMBO

『ティエルノ・ボカール』の公演が世界を巡るようになり、ドルシーが日本食好きということもあって,彼とよく食事をすることがあった。あれはバルセロナの公演中だったと思う。少し市街地から離れたモール内にある日本レストランでいつものように一緒に食事を…

ドルシー・ルガンバとの出会い

ブルック劇団で新たな作品作りをするとき、役者の選択で苦労することが往々にしてある。『ティエルノ・ボカール』の演劇化に着手したとき、リハーサル段階で何度かの交代劇があり、最後にアマドゥー・ハンパテバーと語り部役に着いたのがドルシーだった。も…

来日したアフリカからの二人の友人

先5月23,24,25日の三日間にわたり、横浜BANK ART1929の主催でルワンダのドルシー・ルバンガ率いる劇団ウルヴィントーレの演劇とマリの美術作家アブドゥー・オウォログムの展示会がBANK ART Stuido NYKで開かれた。このドルシーとアブドゥーの二人は、ピータ…