カン・テーファンとの再会・再演 / 名古屋・静岡


<カン・テーファン> <土取利行>
 五月の郡上八幡での韓国打楽器集団ノルムマチとの熱い演奏が終わって一月あまりが過ぎた。昨日はそのノルムマチから来年ソウルでの再演の呼びかけがあった。そんな余韻の続く中、韓国からのもう一人の音楽家が来日する。ノルムマチとは対照的な、グループではなく一人で、そして楽器は伝統的なそれでなく西洋のアルトサックス、演奏は完全な即興演奏。この孤高のアルトサックス奏者カン・テーファンとのデュオ・コンサートを名古屋と静岡の二カ所で開催する。
 まずは6月25日(火)、名古屋TOKUZO名古屋市千種区今池1-6-8 ブルースタービル2F
開場:18:30 開演:19:30 前売り:3500円 当日:3800円 
予約052-733-3709 詳細はhttp://www.tokuzo.com
続いて6月25日(水)、静岡「青嶋ホール」静岡市葵区西草深町16-3
開場:18:30 開演:19:00 前売り4000円 当日4500円
予約問い合わせ/ IMA静岡054-253-6785 mail/ imaszok@yahoo.co.jp
青嶋ホールへのアクセスhttp://www.s-cnet.ne.jp/~scn01741/access.html

カン・テーファンについては2011年に共演したときにブログに書いたものを掲載しておく。
「アルトサックス奏者カン・テーファンは、韓国の孤高の即興演奏家である。安保で揺れていた60年から70年代、日本の音楽界ではヨーロッパやアメリカの動向に影響を受け、自由を標榜する音楽家達が既成のロックやジャズを超えたフリージャズやパンクロック等に熱中し始めていた。で、韓国はというと、いわゆるスタンダードなジャズやロックさえも演奏することがままならぬ独裁政権が続いており、ましてやフリージャズなどを口にする者等もほとんどいない状況だった。中等高等学校時代からクラシックのクラリネットを吹いていたカン・テーファンは、60年代にソウル芸術大学でジャズと出会い、その後南北戦争の余波が残るアメリカ軍関係のクラブでビッグバンドに参加するなどして活動していた。そしてサックスでのジャズ演奏に切り替え1967年、23歳のときにリーダーバンドを結成する。しかしオーソドックスなジャズ演奏に疑問を持ち出した彼は、70年代後半から自由な音楽を目指し、独自の音楽スタイルを追求して行くようになる。この頃1978年のソウルはジャズミュージシャンでさえ30人程しかいなかったという外来音楽戒厳令の状態だったが、その中でフリージャズという過酷な演奏の道を彼は選択し、その意志は今日までぶれていない。70年代後半といえば私は間章との邂逅で近藤等則等とEEUなるグループを結成し、フリージャズからフリーインプロビゼーションを展開。その後すぐに渡米、渡欧し、欧米の即興演奏の大家たちとの演奏で連戦錬磨を繰り返し、ジャズとはおよそ縁のないと思われるピーター・ブルック劇団での音楽活動にも入って行く。さらに世界の民族音楽への興味からアフリカ、アジアの音楽を吸収し、日本の伝統音楽や古代音楽へと開眼して今にいたっている。しかし私自身、さまざまな音楽の道を彷徨っているようで、実は一貫している音楽姿勢と云うものがある。それはどんな音楽においても、即興演奏ということを重視してきたということである。カン・テーファンと共通するところがあるとすればこの即興演奏へのこだわりというところだろうか。彼はジャズによって洗礼を受けたアルトサックスという西洋音楽金管楽器だけに集中してこの即興演奏に向かうのに対し、私はあらゆるパーカッション、のみならず弦楽器も気鳴楽器も、時に声や歌をも使って即興演奏に向かう」

 今回のデュオではドラムセットを中心にフリーインプロビゼーションに徹したいと思っている。ちなみに名古屋での演奏はもう思い出せないほどはるか昔に遡ってしまっている。静岡もしかりである。またとない機会をお見逃し無く。