バラフォン入国禁止

5 月30日、オーストラリア、シドニー空港に着くなり、予期せぬ出来事が起こった。シンガポールから手荷物で持って来た私の楽器のうち、西アフリカ製のバラフォンが税関の検査で持ち込み禁止となり、小一時間ほど主催者側マネージャー等と一悶着。バラフォンの共鳴器として鍵盤下にぶら下がっている小さなヒョウタンの一つにどこかの国の穀物が付着していたらしく、外国からの食べ物や植物等の持ち込みを禁止しているこの国の税関が、その種の徹底検査が必要で持ち出しはできないというのだ。公演は三日後からだが、それまでに彼らが返すあては定かでない。翌日、念のためにと主催者側はシドニーの音楽家バラフォンを持っている者を探し、それを借りるべく出かけたが楽器は玩具のように小さく使い物にはならなかった。結局なんども税関を説得したあげく公演の前日に取り返すことができ、無事解決。どうもいじのわるい税関の検査官にひかかったらしく何をいっても駄目だったそうで、担当官が代わって問題が解消したらしい。この調子だとアフリカの楽器はほとんど駄目ということになる。バラフォンや太鼓は自然の木からできていてバラフォンの響鳴器には特別な響きをだすためのクモの巣が張ってあるし、トーキングドラムの紐は動物の皮を撚って編んだもの。ほとんどが自然素材の楽器を使うアフリカの音楽家はこちらにはこれなくなる。ニュージーランドでも同じ税関のチェックがあったが、こちらは無事に通過し、コンフェランスで楽器は無事通過したかとの質問があったので、もしアコースティックな自然素材の楽器を排除するならこの国の音楽はエレクトロ楽器のロックバンドやDJのようなプラスティック・バンドばかりになると皮肉まじりに応えた。ということで、無事税関をくぐり抜けて来たアフリカのバラフォン、ここでは特別によい響きに聞こえた。