ソウルの日々(2)

 韓国の音楽の中でもよく知られている打楽演奏,サムルノリ。チャンゴ、プク、ケンガリ、チンの四種の打楽器群からなるこのパーカッションアンサンブルが世界の注目を集めるようになったのは、今も現役で活躍する金徳寿(キム・ドク・ス)の功績によるところが大きい。韓国音楽のシンボル的存在ともいえるこのサムルノリは、日本の和太鼓集団のように今ではおそらくアマチュアからプロまで含めて何千何百もの集団が生まれているようだ。今回の滞在でもいくつかのサムルノリを演奏するグループを見て来たが、その中でも印象的だったのがノルムマチと称する演奏グループである。彼らは先に書いたKOUSでの民俗舞踊の会で終始他の古典楽器奏者と共に演奏を担当しており、その後スタジオに招待され会うことになった。ノルムマチはチャンゴと歌を担当するリーダーのキム・ジュ・ホンと三人の若者からなるグループで時にピリ奏者が加わることもある。キム・ジュ・ホンは四十前の最も活動期にある芸達者。韓国南部の珍島出身でリー・クァン・スやキム・ドク・スから歌唱、打楽器、シャーマン・リズムなどを習い、1993年にリー・クァン・スをリーダーとするノルムマチを共に結成。95年にリー・クァン・スに変わって彼がリーダーとなり新たにノルムマチを結成し、現在にいたる。またアン・スク・ソンやハン・スン・ホのもとでパンソリを修すなど、歌の方にもかなり力を注いでいる。村の芸能にすぎなかったサムルノリを舞台芸術として完成させたキム・ドク・スの、いわばネクストジェネレーションにあたるといえよう。スタジオであったのは彼らが郊外での演奏会を終えて戻ってきた夜の十時過ぎ、いろいろと音楽談義に花を咲かせた後、チャンゴを借りて素手で演奏。ジュ・ホンのチャンゴともしばし即興。すでに午前一時を回っていた。伝統を学び現代につなぐべく努力しているグループがここにもいた。彼らとも近いうちに日本のどこかで遊撃するつもりだ。

ノルムマチのスタジオで

キム・ジュ・ホンに紹介された打楽器店で私のチャンゴ用皮膜を作ってもらう