紺碧の空の下で開かれた創造塾

海外公演が続いていたため、一年半ぶりに郡上立光学舎での連休日三日間のワークショップをやっと開催することができた。初日は雨まじりの薄曇りとなり室内でのワークにしたが、うってかわって二日目はどこまでも突抜けるような青空。その空の青を水面に映し出し、エメラルド色に輝く秋の吉田川。朝一番、東方の山から上ってくるまばゆいほどの陽の光の下で身体を開放するいくつかのエキササイズを行った後、吉田川を少し下った急流の淵に立ち、岩に向かって郡上の唄を。今回は演劇的なワークを通じてさまざまな関係性を体験してもらうためにいつもとは違って落語のテキストを使用。たまたま桃山晴衣が生前に読んでいた書物を整理していると「上方芸能」という雑誌が出てき、その中に作家の藤本義一氏が発表された新作落語が掲載されていた。大阪弁で書かれたこの面白い台本を基にさまざまな実験を試みた。また参加者の一人に韓国系日本人の女性がいたのと、私の次回の公演が韓国の舞踊家とのコラボレーションということもあり、音楽講義では日本芸能のルーツといわれる「伎楽」に触れ、百済味摩之によってもたらされた飛鳥、奈良時代のこの芸能がいま日本各地に残っている祭りの芸能とも深く繋がっていることなどについて話す。またこの芸能論と合わせ、実習篇として郡上踊りを来舎してくれた地元の踊り上手な若者から丁寧に教わり、郡上の芸能文化の奥深さを身を以て体験してもらう。そして夜は囲炉裏を囲んでの食事となり、続いて私と桃山晴衣が立光学舎で10年以上にわたって創作を続けて来た全国に例を見ない「伝でん奥美濃ばなし」の貴重な記録映像を特別プログラムとして鑑賞。最後の三日目は、またまた素晴らしい秋晴れとなり、見上げる空の下に紅葉間近き山がくっきりと浮かび上がっていたため、いつも村の道をランニングやジョギングで往復するのに代えて、山の霊気を浴びにゆくことにした。猿や鹿が群れ集うようになったこの山、高さこそないものの、かなりの急斜面になっていたため、頂上まではいかず途中で休んで唄の練習。川や山で声を出すのは実に気持ちよく、おのずと大きな声も出るようになるし、うたの何たるかを、自然から教えられることがなによりも素晴らしい。案内にも書いたが、立光学舎の茅屋根の下で行うワークショップはこれで終止符を打つ。「伝でん奥美濃ばなし」や数々のワークショップを二十数年近くにわたって支えてくれた茅屋根に、そしてこれを葺いてくれた職人さんに感謝の気持ちを捧げつつ行った今年のワークショップは個人的にも感慨深いものとなった。