パリ、ブッフ・ドュ・ノール劇場での桃山晴衣追悼コンサート

12月15日、ブルックの『11&12』を上演中のブッフ・ドュ・ノール劇場で桃山晴衣の一周忌追悼コンサートを持った。12月5日の命日をパリで迎えることになったため、プライベートで知人宅での演奏会を考えていたら、マリ・エレーヌ・エスティエンヌとピーター・ブルックがHarueの追悼会なら劇場でということになり、彼女と親交のあった知人や劇場関係者を招いてのイヴェントとなった。晴衣と、「夜叉姫」パリ公演でフランス語の語りで出演していただいたブルック夫人、ナターシャをはじめ、古参俳優ブルース・マイヤーズやキランはロンドンから、ルワンダ人俳優ドルシー・ルバンガはベルギーから駆けつけてくれた。『マハーバーラタ』で長く仕事をしてきた脚本家のジャン=クロード・カリエール、衣装・舞台美術のクロエ・オボレンスキ、そしてこの人の存在なくしてはブッフ・ドュ・ノール劇場もピーターの活動もなかった、大プロデューサーのミシュリン・ロザンも病身にもかかわらず参席してくれた。「11&12」の役者をはじめ時間をさいて足を運んでくださった百名近くの方々に心からお礼を申し上げます。
 舞台は二枚のペルシャ絨毯が敷かれ、この日のために晴衣をイメージして創作してくれたというハット・デザイナーの日爪ノブキ君のオブジェが三人の演奏家の背後を飾る。
 演奏家は「マハーバーラタ」以来の親友で、時に演奏も共にしてきた、トルコのスーフィー、メヴラナ派のネイ奏者、クツィ・エルグネル。昨年、立光学舎を訪ねてくれ晴衣の祭壇で演奏してくれた古典から現代曲までをこなす気鋭のチェリスト、エリック=マリア・クテュリエ。わたしは今回弦楽器エスラジと太鼓を担当。
 桃山晴衣梁塵秘抄から「君が愛せし」をレコードでかけ、それにかぶさるように静かにエスラジの即興へ。続いてゲスト演奏家が登場し、エリックがバッハの曲、クツィがルーミーの曲を。そして三人で桃山の父上、鹿島大示氏の作曲「ナイオン」を演奏。グルジェフの曲、完全即興演奏へと続き、一曲が終わるごとに暖かい拍手がおこり、深い静けさが張りつめていた。
 この演奏会はエリック・マリアが出演している映画『ご縁だま』の映画監督、江口方康氏がカメラ隊を動員して記録を残してくれた。演奏後、ピーターも快くインタビューに応じてくれたそうで、編集されたフィルムを観るのを楽しみにしている。
 演奏後は一人一人にご挨拶もできないまま、次の舞台『11&12』の準備、この夜の公演は連日通り、三階バルコニー席までぎっしり観客で埋まり、気を抜く訳にはいかなかった。



写真/リハーサル風景
(左からエリック・マリア・クテュリエ、土取、クツィ・エルグネル、後ろに日爪ノブキ)