11月に開催する二つの弾き語り(その一/ティエルノ・ボカールのことば)


「あなたの真実、わたしの真実、そして真実」
アフリカ、マリの小さな村バンディヤガラで孤独な死を遂げたイスラーム、ティジャニヤ派の導師ティエルノ・ボカールの神秘のことば。アフリカの大作家、アマドゥー・ハンパテ・バーによって書かれた『ティエルノ・ボカールの生涯と教え』をもとに演出家ピーター・ブルックが国際劇団最後の作品として演劇化した『ティエルノ・ボカール』『11&12』は私が音楽を担当したブルックの宗教劇といえる「鳥の会議」「マハーバーラタ」と並ぶ最後の作品である。日本の幕末から明治にかけての時代、西アフリカではフランスやヨーロッパ各国の植民地政策が進められ、同じイスラーム教徒が一つの教えの正当性を巡って分裂をはじめていた。やがて宗教的真実をよそに片方の教えを信ずる教団をフランス植民地政府が擁護し力を増大させていくのに対し、もう一方の真実を追求する教団は壊滅に追いやられていく。後者の側に立たされた導師ティエルノ・ボカールは、彼を敵とし、除外しようとする教団やフランス植民地政策者たちにも、決して悪意をもつことなく寛容と非暴力を貫き、自らの信ずる教えを生き、慕われてきた信者や村人、家族さえも立ち去ってゆく中で命を絶つ。なぜ彼は孤独な道を選んだのか。
真実とは何なのか。幼少の頃から青年時代までをティエルノとともに過ごし、教えを受けてきたハンパテ・バーは著書の中でこのイスラーム導師の生涯を綴り、神秘的かつ宗教的教えやことばを紹介した。そしてこの「ティエルノ・ボカールの生涯と教え」は、ティエルノの時代から一世紀を経た今、寛容と非暴力の教えの書として注目されるようになっている。(英語やフランス語、その他各国でも訳されこの著書が出版されているが残念な事にイスラームやアフリカには無関心な日本では出版されてない)

アマドゥー・ハンパテ・バーの邦訳書
 ブルックの「ティエルノ・ボカール」は、日本で上演されなかったこともあり、昨年世界公演が終わって帰国した際、東京で「ティエルノ・ボカールのことば」として弾き語りのを会をもったところ再演を望む声が出てき、今回は信州松本のアーティスティックなカフェ、ラボラトリオでの上演となった。どうかこの機会をお見逃しなくご来場ください。

土取利行 弾き語り
「ティエルノ・ボカールのことば」The words of Tierno Bokar
11月12日(土)19時開演(18:30開場)
入場料/3000円 会場/ラボラトリオ LABORATORIO
〒390-0874 長野県松本市大手1-3-29
*本公演は定員予約制となっています。僅かではありますが残席があるようですのでお申し込みはお早めに!
お申し込みはFAXかお電話でTEL/FAX/0263-36-8217