神楽の里で講演、伎楽鼓演奏

(写真:上段 吉備高原神楽民俗伝承館での演奏 / 下段 備中神楽の面と伝承館 )


5月30日(土)、岡山県美星町の中世夢が原・吉備高原神楽民俗伝承館でレクチャー&演奏を開催した。美星町は星の美しく見える町としてよく知られる所で、毎晩定時刻に街全体が消灯する。ネオンやイルミネーションで化粧した都会とは異なり、夜空には星々が燦然ときらめきを放つ。標高300メートル余の高地の各所に中世の山城、農家、辻堂、城主の館など、土壁、茅葺き屋根の復元家屋が点在し、これらとは対照的に美星町のシンボルともいえる現代の天文台も領内に配している。この夢が原の武士の館前広場で韓国の房承煥プンムル団と激しい日韓・パーカッションバトルを行なったのが2003年夏、あれから6年の歳月が流れた。このコンサートの仕掛人が、今年2月に岡山市のルネスホールで「古代音楽レクチャー」開催に奔走してくれた日高氏(彼については2月21日の本ブログ参照)。岡山でのレクチャーの後、まだ半年も経っていず、しかも観衆を集めるには地理的にも厳しい夢が原での公演に踏み切ったのは、私がこの6月中旬からピーター・ブルック劇団の仕事で長く日本を去ることになるため、どうしてもその前にもう一度レクチャーをやって欲しいという日高氏の熱意に動かされたところが大きい。また会場となった吉備高原神楽民俗伝承館は私より以前に桃山晴衣がコンサートを開いてもおり、なにかと縁の深い所なのである。レクチャーは、岡山で行なった旧石器、縄文の音楽の話の続編というべき、弥生時代から飛鳥時代にかけての音楽、芸能の形成についての話を、自ら演奏してきた「銅鐸」と「呉鼓」に視点を置きながら展開した。そして後半は備中神楽の伝承館ということもあり、伎楽鼓と神楽太鼓を用いての演奏。序奏として桃山の「梁塵秘抄」からの巫女うたを流し、激しい伎楽鼓へと導いていった。日高式イヴェントの真髄は、派手なチラシも作らず、自らの足で人に呼びかけ観客を集めることである。岡山市内ならともかく、しかもレクチャーにもかかわらず、今回も100名を超す熱心な観客を集めてくれた。夜空の星が永久に輝き続けるように、ここ美星町夢が原の文化の光も永久に輝き続けることを祈ってやまない。